歯科医院で受ける歯列矯正は、悪い歯並びを根本から改善できるものの、治療費が比較的高く、治療期間も数年に及ぶことが珍しくありません。それだけに、歯並びの乱れに悩まされている方は、自力で治す方法を模索しているかもしれません。
今回はそんな歯並びの乱れや異常を自力で治すリスクについて解説し、正攻法ともいえる歯列矯正についてもご紹介します。
▼歯並びは自力で治すことはできない
結論からいうと、歯並びの乱れは自力で治すことができません。なぜなら歯は、顎の骨にしっかり埋まっている器官だからです。それを自力で強引に治そうとすると、さまざまなリスクやトラブルが生じるためご注意ください。歯科医師からすると非常に危険な行為であり、それを推奨することは絶対にありません。
しかし、歯並びを良くすることができるとされているマウスピースがネットで売られていたり、割りばしを使って歯並びを矯正する方法が紹介されていたりするなど、一見自分で治すことができるのかなと思ってしまう情報が世の中に多くあるのも事実です。
市販のマウスピース
市販されている矯正用のマウスピースは、1,000円程度で手に入るものの「既製品」である点を忘れてはいけません。私たちの歯並びは一人ひとりで大きく異なりますので、既製品で治療するのはほぼ不可能です。歯並びの状態によっては、多少改善されることもあるようですが、歯や歯茎、顎の骨に悪影響が及ぶリスクの方が高いと言えます。
割りばしを使った歯列矯正
歯並びの乱れは、割りばしで改善できません。割りばしを適切な方法で噛むことで、噛み合わせの調整を行うことは不可能ではありませんが、専門家が推奨する方法ではありません。割りばしの噛み方や噛む時間、噛む位置が不適切だと歯や歯茎への悪影響の方が大きくなります。
▼歯並びを自力で治そうとするリスク
歯並びを自力で治そうとすると、次に挙げるようなリスクが生じます。
リスク1 歯や歯茎を傷める
歯に対して不適切な力を加えると、歯や歯茎、顎の骨を傷めてしまいます。具体的には、歯や歯茎に炎症が生じたり、歯根が吸収したりします。ペンチなどを使って歯に強い圧力をかければ、歯の破折や脱臼などを引き起こすこともあります。
リスク2 歯並びが悪くなる
歯科医院で行う歯列矯正は、緻密な計算のもと歯を動かしていく処置であり、時間はかかりますが、0.1mm単位で歯並びの調整が可能となっています。一方、自力で歯並びを治す方法は、矯正歯科に関する知識のない人が自己流に歯を動かす行為なので、歯並びや嚙み合わせをかえって悪化させてしまうことの方が多いです。
リスク3 後戻りは避けられない
歯並びの乱れを運良く自力で改善できたとしても、保定処置を行わなければ歯の後戻りが生じます。一般的な歯列矯正では、歯の移動と同等の期間、保定装置を装着して後戻りを防止します。そこまで自力で行うことは不可能と言わざるを得ません。
▼歯並びを悪くする生活習慣
悪い歯並びの原因は、遺伝的要因が占める割合もそれなりに多いですが、生活習慣も大きく関わっているのも事実です。次に挙げるような生活習慣は、歯並びを悪くするため要注意と言えます。
指しゃぶり
指しゃぶりは、出っ歯や開咬(かいこう。歯を噛み合わせた時に、奥歯は噛めていても、前歯が噛み合わず隙間ができる症状。)といった歯並びの異常を引き起こします。
離乳・卒乳してしばらくは指しゃぶりがあっても問題ありませんが、3歳、4歳、あるいは大人になってもその習慣が残っている場合は、改善した方が望ましいです。意外に思われるかもしれませんが、成人してからでも指しゃぶりの習慣が続いていると歯並びが悪くなります。
口呼吸
口呼吸は“万病の元”と言われるくらい有害な習慣です。常に口が開いていることで、お口の中が乾燥し、虫歯菌や歯周病菌、風邪の原因となるウイルスや細菌の活動が活発になるからです。
また、口腔周囲の筋肉が緩むことで歯列にかかる圧力が弱まり、前歯が前方に傾くなどして出っ歯が誘発されることがあります。
片側で噛む癖
食事の際に片側だけで噛んでいると、お口の筋肉の発達に偏りが生じると同時に、歯並び・噛み合わせも乱れていきます。さらには顔のゆがみにもつながっていくため要注意です。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、歯の摩耗を促すため、歯がすり減ります。その結果、噛み合わせが深くなるなどの異常を引き起こします。また、個々の歯に過剰な圧力がかかることで、歯並びが乱れたり、歯が欠けたりすることもあります。
軟らかいものばかり食べている
食生活においては口にする食品の硬さにも注意を払う必要があります。食べやすい・飲み込みやすいからといって、軟らかいものばかり食べていると、お口周りの筋肉が衰え、歯並びや噛み合わせも安定しなくなります。
これはご高齢の方に多く見られる現象ではありますが、発育期のお子様や若い方も同様に注意すべきポイントといえます。
▼歯科医院で歯並びを矯正する方法
ここまで、歯並びを自力で治すリスクなどについて解説してきましたが、歯並びをキレイにしたいのであれば、もっとも有効な方法はやはり歯科医院で受ける歯列矯正です。歯科医師の中でも歯並びの治療実績を積んできた矯正医なら、安全性を確保しながら理想に近い歯並びに近付けることができます。
ワイヤー矯正
金属製のワイヤーとブラケットを使った歯列矯正です。世界的にもスタンダードな矯正法といえるでしょう。歯の3次元的な移動も可能で、ほとんどの歯並びを改善できます。ただ、矯正装置が目立ちやすいという難点があることから、目立ちにくいマウスピース矯正を選ぶ人が増えてきているのが現状です。
ワイヤー矯正の費用と治療期間
ワイヤー矯正にかかる費用は、1,000,000円前後です。装置を歯列の裏側に設置する「裏側矯正」は、専用の装置を使用したり、技術を必要としたりするため、1,400,000円前後かかることが多いです。歯並び全体を矯正する治療期間はいずれも2~3年程度となっています。歯を動かす動的治療が終わったら、その位置で歯を固定する保定に2~3年を要します。
マウスピース矯正
透明な樹脂製のマウスピースを使った歯列矯正です。装置が目立ちにくい、歯の移動に伴う痛みが少ない、食事と歯磨きの時に装置を取り外せるなど、従来のワイヤー矯正にはないメリットがたくさんありますが、適応範囲が比較的狭いというデメリットも伴います。歯並びの乱れが軽度から中等度で、痛みやストレスの少ない歯列矯正をお望みの方にはおすすめできる矯正法といえます。
マウスピース矯正の費用と治療期間
ひと言でマウスピース矯正といっても、現在はたくさんのメーカーが異なるシステムを提供しています。そのためマウスピース矯正にかかる費用相場には大きな幅があるのですが、900,000円程度で受けられるのが一般的です。治療期間は、歯並び全体を矯正する場合は1~3年程度かかります。ワイヤー矯正と同様、保定にも同等の期間を要します。
当院の場合、歯並び全体を治す(インビザラインフル)費用は79(期間限定)~90万円程度、部分的なマウスピース矯正(インビザラインGO)の費用は40万円程度です。他の歯科医院も同様ですが、その他にも検査・診断料や保定処置でも別途、費用が発生します。
インビザラインについても、もっと知りたい方はこちらもご覧ください。「マウスピースで歯列矯正(インビザライン)|メリット・デメリット、費用と期間を解説」
▼まとめ
今回は自力で歯並びを治すことについて解説しました。前歯が前方に少し傾いているぐらいであれば自力で治せるのではと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は異なります。歯並びを治すことは専門家である歯科医師でなければ不可能と言っても過言ではありません。
歯並びの乱れにお困りであれば、いつでも当院にご相談ください。乱れた歯並びを歯列矯正で改善すれば、見た目が美しくなるだけでなく、歯磨きがしやすくなることで虫歯や歯周病リスクも抑えらえます。