インビザラインは、見た目や装着感、日常生活への影響などの観点では文句の付け所がないほど優れた矯正装置ではありますが、治療にかかる期間や後戻りのリスクに関してはあまりよくわからず、不安に感じている方も多いようです。
そこで今回は、インビザラインでの矯正治療の平均治療期間やマウスピースの使用枚数、治療期間を延ばさないために注意すべきポイントなどを詳しく解説します。
▼インビザラインでの矯正治療の平均治療期間は?
1ヵ月で何ミリ動く?
インビザラインはマウスピース矯正の一種であり、従来のワイヤー矯正とは全く異なる仕組みで歯を動かします。そのため歯の移動速度にも従来法と違いが見られるのですが、1ヵ月で歯が動く距離は共通しています。
インビザラインもワイヤー矯正も1ヵ月で動かせる歯の距離は0.5~1mm程度です。さらに細かく説明すると、インビザラインの場合はマウスピース(アライナー)1枚あたり0.25mm程度歯を動かせるので、結果として1ヵ月0.5~1mm程度となります。
マウスピースの平均枚数
全顎的に動かすケースをインビザラインで治療する場合、マウスピースは全部で50枚前後必要となります。患者さまの歯並びの状態によってはもう少し枚数が必要となることもありますが、平均的には40~50枚程度といえます。
平均的な治療期間
インビザラインのマウスピースは7~10日に1回くらいの頻度で交換するのが一般的なので、50枚すべてを使い終わるまでには、1年~1年半程度の期間を要します。
これは従来のワイヤー矯正と大差はありません。歯並びの乱れが比較的軽度であれば、1年程度で治療を完了できることもあります。
保定にかかる期間
インビザラインによるマウスピース矯正でも治療後の保定(ほてい)が必須となっています。保定とは、歯の後戻りを防止するための処置で、リテーナーという専用の装置を使用します。
インビザラインで矯正治療を行った場合は、歯の移動に要した期間と同程度、保定処置を受ける必要があります。つまり、マウスピースを装着していた期間が1年半の場合は、保定にも1年半程度かかるものとお考えください。
実はこの点も従来のワイヤー矯正とほぼ同じです。インビザラインは快適に歯並びを治せるというメリットがあるため、治療期間や保定期間が長くなるイメージがあるかもしれませんが、実際はそんなことはないのです。
▼治療に時間がかかる歯並び
インビザラインによるマウスピース矯正の治療期間は平均で1年から2年程度ですが、歯並びの種類や状態によって大きく変わることがあります。具体的には次のようなケースに注意が必要です。
抜歯が必要な場合
スペースの不足が著しく、複数の歯を抜かなければ歯並びをきれいにできないケースでは、標準よりも長い治療期間を要します。
例えば、抜歯の対象となりやすい小臼歯の大きさは7~8mmあります。小臼歯を抜歯した場合、抜歯をして空いた7~8mmのスペース分、歯を移動させるわけですから、それだけでもそれなりの時間がかかります。そもそも抜歯が必要となるケースは歯並びの乱れが大きいことも珍しくないので、標準よりも治療期間が長くなる傾向にあるのです。
デコボコが大きい歯並び
いわゆる乱ぐい歯と呼ばれる歯並びで、デコボコの度合いが大きい歯並びは、治療に長い期間がかかります。歯が単に傾いているだけなら対処しやすいのですが、歯が生えている位置に大きな異常があると、それを正常な位置まで移動するのに相応の期間を要します。
▼マウスピースを追加で作成することも
インビザライン矯正では、治療のスタートラインでゴールまでのマウスピースが完成しています。標準的な症例では、50枚程度のマウスピースが出来上がっており、それをスケジュール通りに交換していくことで、シミュレーションで描いた歯並びを実現できるのです。
ただ、インビザラインのデジタルシミュレーションは万能ではありませんし、治療を進めていく過程で予想外のトラブルも発生します。その結果、当初予定していたマウスピースだけでは矯正治療を完了できなくなるのですが、「リファインメント(追加アライナー)」を利用することで、マウスピースを追加作成できます。リファインメントとは、「改良・改善」という意味を表す英単語で、誤差が生じた治療計画を改善し、軌道を修正するという意味が込められています。
実は、インビザライン矯正を受けた多くの人がこのリファインメントを利用しており、最初に作ったマウスピースだけでは不十分となるケースは決して珍しくないのです。リファインメントには原則として追加費用がかかりませんが、マウスピースの装着を怠ったことで治療計画に乱れが生じた場合などは、例外的に費用が発生することもありますのでその点はご理解ください。
▼矯正治療の期間を延ばさないために
次に挙げるポイントを意識すると、インビザラインによる矯正期間を延ばさず、計画通りに治療を完了させやすくなります。
マウスピースの装着時間を守る
インビザライン矯正の期間を延長させない上で最も重要なのは、マウスピースの装着時間を守ることです。1日20~22時間というマウスピースの装着時間をしっかり守っていれば、矯正期間が大幅に延長するリスクを回避できます。
もちろん、インビザライン矯正の期間はその他の原因によっても延びることがありますが、マウスピースの装着時間を厳守することが矯正を予定通りに終わらせるために必須の条件であることに間違いはありません。
マウスピースを紛失しない
矯正治療の期間が延長する理由として意外に多いのが「マウスピースの紛失・損傷」です。これは着脱式の矯正装置ならではの問題ですが、お口から取り外したマウスピースをどこかに置き忘れたり、誤って捨ててしまったりすることがあるのです。マウスピースを不適切に取り扱うと割れたり、欠けたりすることもあるため十分にご注意ください。
マウスピースを紛失した場合は、保存されたデータに基づいて新しいものを複製すれば良いのですが、治療計画よりも期間が長くなることは間違いありません。
虫歯・歯周病にならない
マウスピース矯正のインビザラインは、食事と歯磨きの際に装置を取り外せることから、ワイヤー矯正よりも虫歯・歯周病リスクが低くなっています。
それでも口腔ケアやマウスピースのお手入れが不十分だと虫歯や歯周病にかかってしまいます。とくに虫歯に関しては、重症度や発生した部位にもよるものの、インビザライン矯正を中断せざるを得なくなることも珍しくありません。しかも、虫歯が大きくなると歯の形が変わり、治療計画にズレが生じます。その結果、治療のスケジュールが大幅に変更されてしまうこともありますので十分にご注意ください。
▼まとめ
今回は、インビザラインの治療期間について解説しました。マウスピース矯正のインビザラインは、従来のワイヤー矯正と治療期間に大差はありません。歯並びによりますが1~2年程度で歯の移動が完了するケースがほとんどです。
後戻りの期間までいれるとさらに長くなるため、可能な限り治療期間を延ばさない努力をすることが大切です。マウスピースは適切に取り扱い、1日の装着時間もきちんと守りましょう。矯正中の虫歯や歯周病は、セルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを両立させることで効率よく予防できるようになります。
当院でもインビザラインによる歯列矯正が可能です。こちらのページで詳しく記載しておりますので、ぜひご覧ください。「矯正歯科(インビザライン・マウスピース矯正)」