歯並びの乱れを整える歯列矯正は、長い期間が必要となる治療として有名です。標準的には1~3年程度かかるため、どれくらいで歯並びの変化が実感できるようになるのか気になる方も多いでしょう。今回は、歯列矯正における歯並びの変化について詳しく解説します。

▼歯並びの変化を実感するのは、いつごろ?

数日間で変化を実感することはない

私たちの歯は、歯槽骨(しそうこつ)という硬い骨に埋まっているため、そう簡単に動かすことはできません。無理に動かそうとして強い力を加えれば、歯根が折れたり、歯槽骨が割れたりしてしまうでしょう。

ですから、歯列矯正を始めて数日間で歯並びの変化を実感することはありませんのでご注意ください。歯並びの状態によっては、1ヵ月経っても目に見える変化が現れないことも多々あります。

3~6ヵ月で変化を実感

矯正による効果は個人差が大きく、どれくらいで歯列の変化を実感できるかも一概に語ることが難しいです。10~20代は歯が動きやすく、治療開始から3ヵ月程度で歯並びの変化を実感できることもありますし、歯が動きにくい人やもともと歯並びがそれほど悪くない人は6ヵ月程度経ってようやく変化が見受けられることもあります。

いずれにせよ歯の移動は皆さんが考えている以上にゆっくりとしたものなので、焦る必要はありません。日々の変化を気にし過ぎると不要なストレスを抱えることになってしまいます。

▼歯並びは1カ月でどれくらい変化する?

1ヵ月に0.5mmくらいが標準

歯列矯正は、マウスピース型矯正装置とマルチブラケット装置の2つに大きく分けられますが、歯が動く速度にそれほど大きな違いは見られません。

2週間に1回くらいの頻度でマウスピースを交換するインビザラインは、1枚で0.25mm程度、歯が動きます。1ヵ月に換算すると0.5mmですね。1ヵ月に1回調整を加えるワイヤー矯正も、歯が動く距離は月間で0.5mm程度です。

つまり、歯を3mm程度動かすのに半年かかるのが歯列矯正なのです。もちろん、ケースによっては1ヵ月で1mm移動することもありますので、上述した数値はあくまで参考程度にとどめてください。

▼治療ステップによって、変化を実感しにくい時期がある

歯列矯正でいつから歯並びの変化を実感できるのか気になっている方は、標準的な治療ステップについて知っておくと良いです。治療ステップによって、矯正の効果を実感しやすい時期としにくい時期があるからです。

ここでは、抜歯するケースを挙げて説明していきます。

STEP1 全体的なデコボコをある程度並べる【変化:大】

歯列矯正ではまず全体的なデコボコをある程度ならしていきます。歯列矯正においてはこの時期が最も効果を実感しやすいといえます。とくに乱ぐい歯のような1歯1歯が別々の方向を向いているようなケースでは、ご自身の歯並びが良くなっていく過程に感動されることでしょう。

STEP2 犬歯を後ろに下げる【変化:中】

スペースの不足が原因で小臼歯を抜歯した症例では、犬歯を後ろに下げるプロセスが入ります。前から4番目の小臼歯はだいたい7~8mmあるため、犬歯をかなりの距離を移動させることになります。このプロセスが歯の移動を実感する上で最もわかりやすいかもしれません。ただ、全体の歯並びには大きな変化が見られないので、患者様の満足感はそれほど高くないかもしれません。

STEP3 抜歯スペースの閉鎖【変化:大】

犬歯を適切な位置まで下げたら、抜歯によって得られたスペースを全体で消費していきます。歯並びが全体に影響を与えるプロセスであるため、比較的大きな変化を実感できることでしょう

STEP4 歯列全体の微調整【変化:小】

最後に、歯並び全体を細かく調整していきます。この段階で歯列はほぼ完成しているので、目に見える効果は期待できません。

STEP5 保定処置【変化:無】

歯を動かす動的治療が終わったら、後戻りを防止するための保定処置に移行します。リテーナーと呼ばれる専用の装置を装着して、いつまでも美しく、機能的な歯並びを維持できるよう歯の位置を固定します。保定は歯列の状態を維持するための処置なので、歯並びに変化は見られません。

このように、歯列矯正では治療の効果を実感しやすい時期と実感しにくい時期があります。

▼歯列矯正の治療期間はどれくらいかかる?

ここまでは歯列矯正でいつから効果を実感できるのかについて解説してきましたが、全体的な治療期間についてもお伝えします。

歯を動かすのに1~3年程度

上下の歯並び全体を治す標準的なケースでは、歯を動かすのに1~3年程度かかります。抜歯が必要ないケースは1~2年、抜歯が必要なケースは2~3年といった感じでしょうか。とても長い期間に感じるかと思いますが、矯正によって得られる歯並びは何にも代えがたい財産となりますので、頑張って最後までやり遂げましょう。ちなみに、マウスピース型矯正装置でもマルチブラケット装置でも歯列矯正にかかる期間に大きな差は見られません。

(歯列矯正に必要な治療期間については、こちらで詳しく解説しています。「歯列矯正に必要な期間とは?矯正の種類別に治療期間の目安を解説」

▼歯が動きやすい人とは?

今回のテーマである「どれくらいで歯並びの変化を実感できるか」という観点では、歯の動きやすさという視点も加えておく必要があります。まったく同じ矯正装置を使っても、歯が動く速度に大きな違いが見られることも珍しくないからです。具体的には、以下に挙げるような人は歯が動きやすいといえます。

(こちらの記事で詳しく解説しています。「歯列矯正で歯が動きやすい人の特徴と動きにくい原因を解説

成長期の子ども

発育途上にある子どもは、骨がやわらかいだけでなく、骨代謝も活発なので、基本的に歯が動きやすいです。成長が終わった20代でも比較的歯は動きやすいといえます。

代謝が活発な人

年齢にかかわらず、身体の代謝が活発な人は、矯正による歯並びの変化も感じやすいといえます。矯正では「骨の吸収と添加」というサイクルを繰り返すことで歯が移動するため、代謝が活発なほど歯の移動速度も上がります。

悪習癖がない人

歯ぎしりや食いしばりなどの悪習癖があると、矯正治療に悪影響が及びます。矯正装置による圧力が弱められたり、まったく別の方向に力が加わったりすることで、歯の移動がなかなか進まないことがあるのです。そうした悪習癖がなく、矯正力がスムーズに伝わるようなケースであれば、比較的歯も動きやすいです。

▼マウスピース矯正(インビザライン)ならではの、変化を実感するポイント

マウスピースを交換する時

マウスピース矯正のインビザラインでは、2週間に1回くらいの頻度で装置を交換します。上でも述べたように1枚のマウスピースで移動できる歯の距離は0.25mm程度なので、1ヵ月くらいで大きな変化を実感することはありませんが、ワイヤー矯正よりも治療の成果を確認しやすいといえます。なぜなら、ワイヤー矯正では常時ブラケットとワイヤーが設置されており、歯並びの変化を実感しにくい構造となっているからです。

一方、インビザラインはマウスピースを着脱した際に歯並びをしっかり確認することができます。しかも、次のステージに移行した際、マウスピースがきつく感じるということは、歯が移動した証拠でもあり、2週間に1回は治療の成果を実感できるのです。もちろん、歯並びの見た目に関してもマウスピースを交換する時にある程度、変化を実感できるでしょう。

▼まとめ

このように、歯列矯正では治療を開始して3~6ヵ月くらいで歯並びの変化を実感できるようになります。一般的な歯科治療と比べるとかなり長くなっていますが、これは歯列矯正の性質上、仕方のないことです。

歯列矯正に伴う歯並びの変化についてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽にエムデンタル矯正歯科までご相談ください。いつから、どのくらいの期間で歯の移動を実感できるかは個人によっても大きく異なるため、まずは矯正医によるカウンセリングを受けましょう。

当院の矯正治療については、こちらのページで詳しく記載しております。ぜひご覧ください。矯正歯科(インビザライン・マウスピース矯正)