歯列矯正は医療の一環であり、歯並びや噛み合わせに“異常”や“病気”が認められる場合に限り、必要性が生じますが、一般の方からするとどのようなケースがそれに該当するのかよくわからないことかと思います。
そこで今回は、歯列矯正が必要なケースについて、具体的な歯並びの種類なども挙げながら詳しくご説明します。
▼矯正治療が必要なケース
次のような症状や悩みを抱えている場合は、矯正治療が必要となりやすいです。
1 歯並びにコンプレックスがある
日本人は、歯並びにコンプレックスを抱えている方がとても多いです。それは出っ歯や乱ぐい歯であることが多く、口元を見られるのが恥ずかしいと感じる方が少なくないからです。しかも歯並びは、自力で治せるものではないため、長年のコンプレックスとなりやすいです。
そうした方には是非とも、歯並びの異常を根本から改善することができる歯列矯正を受けていただきたいです。歯列矯正であれば、口元の審美的な問題も根本から解決できることが多いです。
2 虫歯や歯周病になりやすい
悪い歯並びは、虫歯や歯周病のリスクを上昇させます。特に歯並びがガタガタになっている場合は、歯ブラシをきちんと当てることが難しいため、ブラッシングにもムラが生じてしまい、歯垢や歯石の形成が目立ちます。
それらは細菌の温床となることから、虫歯や歯周病にかかりやすくなるのです。もちろん、歯並びがきれいでも口腔ケアが不十分な場合は虫歯・歯周病のリスクが上昇するため、いずれにせよ一度、歯医者さんを受診するのが望ましいです。
3 噛み合わせが悪い
「歯並び」と「噛み合わせ」は異なるものです。歯並びはどちらかというと見た目の問題であり、噛み合わせは歯が持つ本来の機能である「噛む」ことと密接に関連しています。ですから、前歯がきれいに並んでいても、噛み合わせに大きな異常があって歯列矯正の必要性が出てくるケースもあるのです。
普段から食べ物を噛みにくいなどの症状に悩まされている方は、歯医者さんで噛み合わせの検査を受けてみましょう。矯正歯科であれば、歯列矯正が必要かどうかも判断できます。
4 身体に影響が出ている
歯並びや噛み合わせの異常によって、身体に何らかの悪影響が出ている場合も矯正治療が必要となります。具体的には、頭痛、肩凝り、顎の痛み、消化管の異常などは、間接的に歯並びや噛み合わせの異常が関係していることもあります。
▼矯正治療した方がいい歯並び
次に挙げるような歯並び・噛み合わせの症状が認められる場合は、矯正治療を行った方が良いと言えます。
1 出っ歯(上顎前突)
上の前歯が前に出ている歯並びで、一般的には出っ歯、専門的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)といいます。
日本人に比較的多い歯並びで、“口ゴボ”(くちごぼ)と表現されることもあるように、見た目があまり良くありません。前歯で食べ物が噛み切りにくかったり、口呼吸が促されたりするなどのデメリットも伴います。
2 乱ぐい歯(叢生)
1本1本の歯が別々の方向を向いている歯並びで、歯列がデコボコになっています。専門的には叢生(そうせい)と呼ばれ、こちらも日本人に比較的多い歯並びと言えます。
見た目が良くない、歯磨きしにくい、汚れがたまって口臭が強くなりやすいなどのデメリットがあります。上下の歯列が正常に噛み合わないことも多いです。
3 すきっ歯(空隙歯列)
歯と歯の間には本来、デンタルフロスが通るくらいのすき間しかありませんが、肉眼でわかるほどのスペースが見られる歯並びをすきっ歯、専門的には空隙歯列(くうげきしれつ)といいます。
歯と歯の間に不要なスペースがあると、食べ物が詰まりやすくなったり、息漏れが生じて発音が悪くなったりします。上の前歯の真ん中にすき間があるケースを特に正中離開(せいちゅうりかい)と呼び、口元の審美性を低下させる要因にもなります。
4 深い噛み合わせ(過蓋咬合)
噛み合わせが深い歯並びを過蓋咬合(かがいこうごう)と呼びます。歯と歯が異常な形で接触することから、歯の摩耗や歯茎の炎症などを引き起こしやすくなります。噛んだ時の力が奥歯に集中することで、臼歯の寿命が短くなることもあります。
5 開咬(かいこう)
奥歯を自然に噛んだ時に、上下の前歯の間にすき間が生じる歯並びです。食べ物を前歯で噛み切れない、口呼吸が促される、発音障害が認められるなど、さまざまなデメリットを伴う歯並び・噛み合わせの異常です。
6 受け口(下顎前突)
下の前歯が前に突出している歯並びで、専門的には下顎前突(かがくぜんとつ)といいます。
歯を噛み合わせた時に、通常上の歯が前になりますが、受け口の場合は下の歯が前になります。噛み合わせが悪く、歯や歯肉を傷つけたり、食べ物がよく噛めなかったりします。また、顎がしゃくれているように見えるため、顔貌のコンプレックスになりやすいです。
▼キレイな歯並びの基準
歯並びの美しさの基準としては「Eライン」が用いられます。鼻の先と顎の先を結んだ線をE(エステティック)ラインと呼び、真横から見てそのラインと口唇の位置関係で、審美的な評価を下します。
日本人においては、口唇がEラインの少し内側にあるくらいがキレイな歯並びと言えます。歯列矯正では、そうしたキレイな歯並びの基準も参考にしながら治療を進めていきます。
▼悪い歯並びや噛み合わせを放置するとどうなる?
悪い歯並びや噛み合わせを治療せずに放っておくと、次のようなことが起こります。
1 物事に消極的になる
悪い歯並びや噛み合わせがコンプレックスとして定着すると、性格が内向的になりがちです。人前で話したり、笑ったりすることが苦手となり、物事に消極的になる人が多いようです。
2 歯の寿命が縮まる
乱ぐい歯のような清掃性が悪い歯並びを放置すると、歯垢や歯石がたまり、虫歯や歯周病を発症します。これらは日本人が歯を失う主な原因なので、自ずと歯の寿命も縮まります。
また、噛み合わせに異常があると、一部の歯に過剰な負担がかかって寿命を縮めるというケースもあり得ます。
3 顎関節症になる
咀嚼(そしゃく)運動の支点となるのは顎関節です。悪い歯並びや噛み合わせでは、咀嚼運動を効率良く行うことができず、必要以上の力を使う場面が多くなります。そのしわ寄せは支点となっている顎関節におよび、顎の炎症や痛みを誘発する顎関節症を引き起こすのです。
4 胃腸への負担が増える
歯並び・噛み合わせの異常で咀嚼(そしゃく)能率が低下すると、しっかりと噛み砕けていない状態で食べ物を飲み込むことになるため、胃や腸の負担が大きくなります。栄養を吸収する効率も低下し、全身の健康状態にも良い影響はありません。
▼歯列矯正の種類
ここまで解説してきた歯並び・噛み合わせの異常は、歯列矯正によって改善することが可能です。2つの矯正方法をご紹介します。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正(インビザライン)の比較については、こちらの記事で詳しく解説しています。治療期間や費用などを比べて検討したい方はぜひご覧ください。「インビザラインとワイヤー矯正、どっちがいいの?メリット・デメリットを比較して解説」
ワイヤー矯正
最も標準的な歯列矯正で、金属製のワイヤーとブラケットという四角い装置を歯の表面に設置して歯並びをきれいに整えます。
マウスピース矯正(インビザライン)
透明な樹脂製のマウスピースを装着して歯並びをきれいにする方法です。装置が目立ちにくく、痛みの少ない矯正法と言えます。
▼まとめ
今回は、歯列矯正が必要となるケースについて解説しました。ご自身の歯並びや噛み合わせの症状で気になることがあれば、いつでも当院までご相談ください。特に今回取り上げた歯並びに当てはまる場合は、歯列矯正の必要性が高いと言えますので、まずはカウンセリングを受けてみることをおすすめします。
当院の矯正歯科については、こちらのページで詳しく記載しております。こちらもぜひご覧ください。「矯正歯科(インビザライン・マウスピース矯正)」